「姫神」を忘れていた

今日から始まる、私の所有するアルバムからランダム再生で選ばれた音楽を紹介するコーナーです(って誰に言っているのだ)。さて、今回ランダムで選曲されたのは・・・

姫神|姫神せんせいしょん

姫神といえば、NHKの番組のサントラやTBSのドキュメンタリー「神々の詩」のタイトル曲や、その他多く番組のBGMとしても使われており、どこかでその音楽を耳にしていることと思います。
姫神は、当初は「姫神せんせいしょん」というバンド名で、中心人物である星吉昭(キーボード、作曲)にドラム、ギター、ベースの四人編成からなっていました。

姫神せんせいしょんのシンセサイザーを使ったサウンドは、当時YMOがヒットしていたこともあって世間的にも受け入れやすかったのに加え、東北の民謡風の日本的なメロディのインストが新鮮でしたね。

星吉昭は、東京から岩手県に活動拠点を移し放送局で音楽制作を行っていたそうですが、岩手放送のラジオ番組の合間に流されていた「奥の細道」が徐々に反響を呼んで、1981年にファーストアルバム「奥の細道」がリリースされます。ちょうどYMOのBGMが発売され、喜多郎がシルクロードのテーマ曲で日本中に知られるようになった頃でしょうか。

一枚目のアルバム「奥の細道」は、和風フュージョンという感じで素人っぽい音作りでしたが、民謡風のキャッチーなメロディはとても親しみやすいものでした。

二枚目の「遠野」は、タイトルのとおり遠野物語のイメージどおり不思議な伝説を思わせる神秘的な曲が多く、サウンドもこなれてきたアルバムになっています。姫神せんせいしょんの懐の深さをこのアルバムで知りました。

そして3枚目の「姫神」ですが、アルバムタイトルが姫神であるあたりからして、かなりの自信作であると思われます。

1曲目の「舞鳥」からして楽曲のクオリティーが素晴らしい。いきなりサビのメロディーが出てきて、聴いた瞬間に東北の風景や空を舞う鳥たちのイメージが浮かんできます。

2曲目の「七時雨」も泣きのメロディと3拍子のリズムのコンビネーションが最高ですね。3曲目は一転してお祭りっぽいリズムとメロディの楽しい曲ですが途中のマイナー調のメロディで曲の深みが増しています。その後も捨て曲なしで、このアルバムが姫神せんせいしょん(いや、姫神も含めて)の最高傑作ではないかと思っています。

残念なことにCDは現在発売されておらず、中古(楽天amazon)で入手するしかありません。また、spotifyなどでもこのアルバムは聞けないようです。ちなみに「奥の細道」は聴けるようですね。

「姫神せんせいしょん」は、4枚のアルバムを出して1984年に解散し、「姫神」となります。

姫神せんせいしょんを解散してから

星吉昭のソロプロジェクトとなった姫神の作品から私が所有している2枚を紹介します。
まずは、姫神としての最初のアルバム「まほろば」です。これは、YAS-KAZとコラボした作品でした。1984年リリース。

まほろば|姫神

ギターやドラムがいなくなったのでバンドっぽさは無くなりましたが、星吉昭のメロディの良さが光る作品。民謡的な土着色は薄れ、より洗練されたサウンドになりました。
アルバム最後の「夢行夜行(まがどきをゆく)」は、幽遠な曲調でこのアルバムを締めくくるにふさわしい作品になっています。

このアルバムを最期に姫神はあまり聴くことはなくなったのですが、1989年にリリースされた「姫神風土記」を聴いたときに、昔の姫神のメロディが帰ってきた!と嬉しくなってCDを買ったことを思い出します。

姫神風土記|姫神

姫神となって6枚目のアルバム。作品全体に感じられる優しい感情が心に沁みてきます。そして、どの曲もメロディが際立ってます。姫神としてのアルバムでは、これをベストにしたいですね。曲間の自然音などのSEも効果的です。

8曲目の「中野ばやしの夜」は、祭ばやしのリズムと笛のメロディからなる曲なのですが、全体の雰囲気は渋く魅惑的で印象的な曲になっています。この曲でマリンバのような音のキーボードのバッキングがあって、これKORGのシンセサイザーM1の音ですよね。私もこのシンセは持っていたので初めて聞いた時は、思わずニンマリしたことを覚えています。この音、好きだったなあ。


姫神は、その後ブルガリアンボイスのような女性ボーカルやモンゴルのホーミーを取り入れた曲などサウンドの幅を広げていきます。私にとっては「姫神せんせいしょん」のころのサウンドが好きなのですが、今聴いてみると星吉昭の作る音楽の素晴らしさにあらためて感動します。

星吉昭は、2004年に残念ながら他界してしまうのですが、この素晴らしい作品たちを忘れてはいけないなと思うのです。