坂本龍一がアレンジした女性ボーカル

今回は、「坂本龍一がアレンジした女性ボーカル」と題してアルバムなどを紹介します。

坂本龍一といえば、YMOだけでなく、サントラや現代音楽作品など多種多様な作風で、好きな作品も多いのですが、あまり積極的に聞かないものもあったりで、私の好きなアーティストの中でも独特な立ち位置にあります。

そんなアーティストですが、彼のアレンジする女性ボーカル作品はとても好きなのです。
音楽としての完成度も高いし、それでいて親しみやすいテイストがあります。なんとなく曲の感じがこんにゃくゼリーっぽいと思っています(意味不明です)。

そんな中でも特に好きな作品を紹介します。

大貫妙子|Cliche

まずは、大貫妙子の「Cliche」。1982年の作品です。

このアルバムは、前半4曲が東京録音、後半6曲がパリ録音ということで、坂本龍一は「黒のクレール」「色彩都市」「ピーターラビットとわたし」「LABYRINTH」の前半4曲のアレンジを担当しています。

とにかく、このアレンジが最高で、この4曲だけでもアルバムを買った価値があると思えたものです。

特に「黒のクレール」のストリングス・アレンジが素晴らしく、この一曲目でがっちり心をつかまれました。しかも、大貫妙子のボーカルに見事にマッチしているんですよね。

そのあとに続く「色彩都市」と「ピーターラビットとわたし」は、キラキラした魅力が満載で、「LABYRINTH」ではまさに迷宮の不安な感じが表現されています。

当時私は、このアルバムをアナログで持っていて、いつもA面の5曲を聴くとすっかり満足してB面を聴く機会があまり無かったことを思い出します。

 

その後、1997年に発売された大貫妙子のアルバム「LUCY」でも坂本龍一がアレンジを担当していて、ここでも素晴らしい仕事をしています。


次に紹介するのは、坂本龍一がプロデュースとアレンジをした女性ボーカルアルバムの最高傑作ではないかと私が思っている作品です。

それは、飯島真理のファースト・アルバム「ROSE」(1983年)であります。

飯島真理|ROSE

今の若い方は、「え、誰ですか?」となるでしょうし、それなりの年齢の方だと「ああ、マクロスの」という感じでしょうか。

飯島真理は優れたシンガーソングライターの一人だと思っていて、多くの作品を残しています。

それでも、ファーストアルバムの「ROSE」を聴くと、「このアルバムを超える作品は無いな」との思いをあらたにするわけです。そこはやはり、坂本龍一によるアレンジの素晴らしさと飯島真理のフレッシュな歌との相乗効果なのかなと思います。

作曲した本人である飯島真理も「アレンジでこんなに変わるんだ」と感想をもらしていたように、ここでも坂本龍一のアレンジは冴えわたっていて、いわゆる捨て曲というか無駄な曲がないのです。

まあ、歌詞を聴くと思わず赤面してしまいそうになる瞬間はあるのですが、それもアレンジで見事にカバーされている気がします。

まあ、これは奇跡の一枚なのではないでしょうか。


そして、どうしても忘れてはいけない曲が、中谷美紀の「MIND CIRCUS」(1996年)ですね。

中谷美紀|MIND CIRCUS

これは、アルバム「食物連鎖」の1曲目で、シングルカットもされた曲。作曲と編曲が坂本龍一であります。売野雅勇による素敵な詞も中谷美紀の声のキャラクターに合っていると思います。

このアルバムの多くの曲を坂本龍一がアレンジしていてアルバム全体の出来もよいのですが、とにかく「MIND CIRCUS」の完成度の高さが突出していて他が霞んでしまう感じですね。イントロのアレンジからしてワクワク感が止まらないですし、曲中のドラムのフィルインが不思議な感じで気持ちいいんですよね。

最近、星野源がオールナイトニッポンでこの曲を名曲として紹介していたようです。

ともかく、これらの紹介した作品は、何年たっても色あせない魅力があるのが一番の驚きでして、私の中において時代を超える作品である、ということを実感するわけです。